さらしを探す男

チェリーレッドの安全靴

木彫のヤモリの目に金箔を貼り、
上から猫の目の様な縦長の瞳孔を描いた。
表情が引き締まって睨みが利く様になり、
魔除けになりそうな顔になったが、
しかしまだ何かが足りない気がする。

ほんの一部、
範囲にしたら数ミリにも満たないかも知れないが
それがあるのとないのとでは、大きな違いがある気がして。
永遠に変わらない輝きを持つ純金粉と、
少し色合いの異なる青金、赤金の金泥がどうしても欲しくて
探しに出掛けた。


まず上野に寄って
昨日買わずじまいだったブーツを買った。
今日もサイズを散々迷った挙句、
取り置きしておいてもらったのよりも
結局ワンサイズ小さな物を選んだ。
履き込んで革を伸ばし、自分の足に合わせて行こう。
ブカブカで履くよりも、その方が良い様だ。
もし昨日買っていたら、きっと大きな方を選んでいただろう。
間に合わずに買えなかった事が幸いしたかも知れない。


買ったばかりのブーツに早速紐を通して、池袋へ向かった。
画材屋で金泥等を買い揃え、
キンカ堂でさらしを、ハンズで梱包に使う為の緩衝材等を買った。
ハンズでもキンカ堂でも、
僕が「さらしはどの階にありますか?」と尋ねると
店員にあからさまに怪訝な顔をされた。
何故だろう。