村井一貴彫刻展

搬入風景

銀座にて彫刻家の友人、
村井一貴の個展搬入を手伝う。


作家の奥方のお父上が搬入の様子を見に来られて
作品の設置に難渋しているのを見るに見兼ねてか
親身になって手伝っているのを見ていて、
感じ入るものがあった。


ワイヤーロープを使用して作品を宙に浮かせるという
特殊な設置方法の為、作品を決められた位置に
一定の角度で固定するのが非常に難しい。
奥方のお父上は服が汚れるのも厭わず床に這いつくばり、
ワイヤーが指に食込むのも気にせず作品の固定を補助し、
手伝いに来ていた仲間たちと同じ様に、或いはそれ以上に、
本気で個展の準備に取り組んでいらした。
デザイナーの御職業柄こうした事に理解があるとはいえ、
けして誰にでも真似出来る事ではない。
作家が現場で適切な作品の設置位置を見定めるまで
作品を宙に浮かせて維持したりするのは、
同世代のものにでも大変な忍耐力の要る作業だ。
それを一言も文句を言うでもなく自ら進んで行う。
これまでどんな風に考え、どんな風に生きて来られたのかが
そのお姿から窺い知れると言うものだ。


何とか日付けが変る前に搬入が済み、
入ったイタリアンレストランで「お疲れ様」と乾杯をして
食事をしていると、テーブルにケーキが運ばれて来た。
大皿の上には花火がパチパチと火花を上げている。
聞けば今日はお父上のお誕生日だという。
オーダーを済ませた後に、店の奥で
奥方がウェイターに何やら囁いているのが目の端に映っていたのは
こういう事であったのかと膝を打つ。
父の為に黙ってサプライズを用意する娘も素敵、
誕生日に黙々と娘婿の搬入を手伝う父上も素敵。
幸せな関係の輪に加われて、楽しい一時を過ごした。


少しはにかみながらケーキの上の蝋燭を吹き消すお父上は
非常にチャーミングであった。
いいな、と思う。
こんな風な生き方は素敵だ。




村井君は非常に繊細に気を配って作品の設置位置を見定めた。
その甲斐あって帰り際画廊の外から眺めると、
とても面白い展示になっていた。





村井一貴展(立体)

日時 2007.2.26mon→3.3sat
   11:30→19:00(最終日18:00まで)
場所 藍画廊
   東京都中央区京橋3-3-8新京橋ビル
   TEL03-3274-4729
   http://homepage.mac.com/mfukuda2/0aiga.html
   http://homepage.mac.com/mfukuda2/aigarou.html