結ぶ

怪し過ぎる…

手を結ぶ
契約を結ぶ
縁を結ぶ
結ぶ事が苦手だと何かと不自由する。


昔から「紐を結ぶ」という事が苦手だった。
荷を纏めたりトラックの荷台にロープを張ったり、
そういう作業が日常的に必要だった頃、
何度か憶えようと努力はしてみたのだが、
幾度教わってもどうしても身に着かない。
緩過ぎたりきつ過ぎたり、或いは滅茶苦茶に縺れて解けなくなったりする。
素早く手際良く荷台にロープを掛けて行く友人の手許に見惚れながら、
「いったい“紐を結ぶ”という能力は、脳のどの部分を使うのだろう。
もしかしたら僕の脳のその部分は生まれつき欠如しているか、
壊れてしまってるのじゃないだろうか」などと考えた。
それほどに、僕は紐を巧く結ぶ事が出来ない。


硝子のペンダントヘッドや蜻蛉玉を首から下げるのに
これまでは鹿革の紐を使っていたのだが、
使っているうちに革が痩せて弱く脆くなる。
お気に入りの硝子玉を落っことして割りたくはないから
丈夫なヘンプで編み直そうと材料を揃え、編み方を検索し、
練習用に買ったジュート(ヘンプよりもずっと安価)で
ああでもないこうでもないと夢中になって編もうと試みた。


まず紐を固定するのに何かないかと手近を探してみて
最初に目に入ったのは、NYで面白半分に買って来た手錠。
パイプベッドのフレームに手錠を掛けて紐を固定し、
緩むのが嫌で力一杯きつく編んでいたら、
知らない間に指の皮が剥けて痛み出した。
それで軍手をして作業を続けたのだが、この時点でもう
「お洒落にHEMPのアクセサリー作ってます」という状況からは
程遠い胡乱な光景が繰り広げられている。
そうして出来上がったのは、この汚い荒縄で何を縛るつもりなのか、
という様な不恰好なシロモノだった。
やっぱり僕の脳の「紐を縛る」のに使う部分は
壊れているか腐っているに違いない。