Lafcadio Hearn

小泉八雲を再読している。

小泉八雲集 (新潮文庫)

小泉八雲集 (新潮文庫)

以前に何度も読んだ事のある話ばかりだが、
別な翻訳者のものだったので雰囲気も少々異なる様に思う。
また、何度読んでみてもその度に好きになる。
飽きるという事がない。
怪異を描いている筈の行間からは、
ヘルンさんと呼ばれて周りの人たちから愛され、
親しまれた人柄が偲ばれる様で、何処か暖かく、優しい。
初めて読んだ時には、何故怪異を取り上げたものの中から、
そんな似つかわしくないものを感じ取るのかと不思議に思ったが、
何度も読んでいると、それはハーン自身が弱者へ向けた目が
この上なく暖かなものであったからなのだろうと思い至る。
妻である節子が綴った「思ひ出の記」の中に、
こんなエピソードがある。

その年の春未だ寒さの身にしむ頃の事でした、ある夕方、私が軒端に立って、
湖の夕方の景色を眺めていますと、直ぐ下の渚で四五人のいたずら子供が、
小さい猫の児を水に沈めては上げ、上げては沈めして苛めて居るのです。
私は子供達に、御詫をして宅につれて帰りまして、その話を致しますと
『おゝ可哀相の小猫むごい子供ですね――』と云いながら、
そのびっしょり濡れてぶるぶるふるえて居るのを、
そのまま自分の懐に入れて暖めてやるのです。
その時私は大層感心致しました。

思ひ出の記

思ひ出の記

「怪談」は、節子から語り聴かされた話を
八雲が再話して纏め上げたものだと何かで読んだ。
節子は最初は自分の知っている日本の昔話等を聴かせていたが、
八雲にもっともっととせがまれて、夫が喜びそうな話を一生懸命訊き集めて来ては
それを語り聴かせたという。
八雲はそれを、きっと子供の様に目を輝かせて聴いたのだろう。
優しくて、可愛らしくて、少し不器用な、
魅力的な人物だったのだろうな、と思う。
へるんさんに会ってみたかったな、と思う。





小泉八雲 Wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%B3%89%E5%85%AB%E9%9B%B2


思い出の記 小泉節子
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小泉八雲夏目漱石
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