祈り

uronnaneko2007-04-14

手足は太く、がっしりと力強くなければならない。
尾は凛として優美な弧を描いていなければならない。
太く短い指は、一本一本を離さずにおいた。
何も洩らさぬ様に。


御依頼を下さった方の新しいお住まいの壁で
日々の暮らしを静かに見守り、
家守の勤めを立派に果たす事が出来る様に。
それだけを願いながら彫った。


何かを創る行為は「祈り」にとてもよく似ている、と
いつもそう思う。
僕にはそれはとてもプリミティブで、自然な行いに思える。
小難しい芸術論や訳知り顔の美術評論家達とは無縁のものだ。


毎日眺めて触れて
何度も鑿を入れ直し
オイルを塗り込んでは磨き、
自分の手の中で「祈り」が新しい命を宿し、脈動し始めるのを待つ。
どんな祈りにもきっと、姿を与えてやる事は何らかの役割を果たす筈だ。
それがたとえ一握りの土くれの様なものであったとしても、
「祈り」が切実でさえあれば、きっと魂は宿る。
何かを創り続ける限りは、そう信じていたい。