チィさんのお母さんは
チィさんと同じ様に小柄で
滅多に鳴かない猫だったけれど
鳴くととても可愛らしい声だった。


あんなに綺麗な声で鳴く猫に 他に出会った事はない。


自分の小さな身体を盾にして
子供にはけして触れさせない
そんな賢い母だった。




チィさんのお父さんは
チィさんと同じ様にフワフワで
とてもとても大きくて立派な白猫だった。


あんなに大きくて立派な猫に 他に出会った事はない。


隻眼で、片方の目は真っ白な長い毛に覆われて
まるで最初からなかったようだった。
一睨みで散歩中の犬が震え上がるのを見た事がある。
犬は文字通り尻尾を巻き、飼い主を置いて逃げ出した。
そんな強面の父だった。




チィさんは小さいけれど
綺麗な声で鳴き、一睨みはなかなかの迫力だ。
父からも母からも、確かに受け継いだものがある。




僕は 立派なお父さんと 賢いお母さんを 知っているよ。
と、頭を撫ぜた。