スウィーニー・トッド


シネマイクスピアリのレイトショーは何度か利用した事があるが、
ファーストショーというシステムがあるのは知らなかった。
平日(月〜金)の午前第1回目上映が¥1,300でお財布に優しい。
こりゃいいや、と 気になっていた
Sweeney Todd The Demon Barber of Fleet Street
を観に出掛ける事にした。
平日だし最初の回だし、良い席で静かに観れるだろうと思いきや、
迂闊にも水曜のレディースデーで女性客が多く、と言うか客の大半が
「ジョニー様キャー!」な感じの女性たちなのだった。
それなりにテンションが高く、ざわついている。
席はかなり後ろの端になってしまった。


以降、ほんの少しネタバレを含みます


スウィーニー・トッドのモデルとなった人物は、
切り裂きジャックが登場するよりもずっと昔、
100年ほども遡ったロンドンに実在したとされている殺人鬼。
それでも これは映画の中の出来事 と思えば、
普段はわりと残酷な描写も眉一つ動かさずに観られるのだけれど、
副題が「フリート街の悪魔の理髪師」だし、殺人鬼の復讐譚なんだし、
勿論ある程度の覚悟の様なものはして行ったつもりだったけれど。
でもでも ジョニー・デップ×ティム・バートン なんだし、
ミュージカル仕立てなんだし、という油断があったと思う。


甘かった。
唄うんだけど情け容赦のないストーリー展開。唄うんだけど。
寧ろ何故に唄うのか、と問いたくなるほどの情け容赦のなさ。
ティム、どうしたん?何か嫌な事あったん?と問いたくなるほどの。
これが「チャーリーとチョコレート工場」と同じ組み合わせだとはとても思えない。


エンドロールが上がり始めて帰って行く客の静かな事。
まるでお葬式の様だ。
始まる前のテンションとの差があまりにも激しくて、
後ろの席からその様子を眺めていて可笑しいのやら気の毒なのやら。
勿論僕も同じ様に俯いて映画館を出たのだけれど。



映画の中でしか知らないロンドンの街並みは、観る度に
本当にこんなに陰鬱で不穏な雰囲気だったのかな などと思う。


それにしてもジョニー・デップには古いロンドンの街並みがよく似合う。
同じくロンドンを舞台にし、切り裂きジャックをテーマにした
フロム・ヘル」でのジョニー・デップは、憂いのある刑事役で
ストーリーもわりと好みのものだった。
殺人という陰惨で暗いテーマを取り扱ったものだというのは変わりないけれど、
あちらには僅かながら救いの様なものがちゃんと用意されていたし。



そう言えば「フロム・ヘル」の中にもアブサンを飲むシーンがあった。

ちゃんとアブサン・スプーンと角砂糖を用意して飲んでみたい。