おめでとう
六月六日。
いつも美味しい珈琲を淹れに来てくれる友人の誕生日。
初めて会ってから、もう二十数年が過ぎた。
いつの間にそんなに長い時間が過ぎ去ったのか、
考えてみてもピンと来ない。
出会った頃とは色々な事が変わってしまった気もするし、
大して変わっていない様な気もする。
付かず離れずの微妙な距離感を保つのが上手な人だから、
長い付き合いも然程に感じられないのかも知れない。
それでも互いを長く知っているという事は面白いもので、
好みの味、好みの色合い、知らず知らずのうちに
お互いの嗜好が何となく解っているから、
話していてもちっとも退屈しない。
今では友人のイメージは、
珈琲の良い香りとすっかり結び付いてしまった。
街を歩いていて何処かから珈琲の香りが漂って来ると、
すぐに友人の顔が思い浮かぶ。
きっとこれからまだまだ長い付き合いが出来るだろう。
もう後十年ほど経ったら、共通の友人と何人かで集まって
何か祝い事の様なものでもしたいな、等と思う。
皆で美味しい物を食べるのでも良いし、
何処かに旅行するのでも良い。
誰も欠けず、それなりに暮らしていたら、
きっと楽しい集まりになるだろう。
その頃皆はどんな顔になっているかな。
僕はどんな顔をしてるだろう。
穏やかに笑っていられるだろうか。
皆が穏やかに笑いながらテーブルについて
飲んだり食べたりしているところを思い浮かべると
嬉しい様な、過ぎた事でもないのに妙だけれど、懐かしい様な、
そんな気持ちになる。