幸せな猫

23年。
人にとっても充分に長い歳月だ。
猫には尚更 長い長い時間だろう。


友人の大切な猫が亡くなった。
23年の長い歳月を生き抜き、
大きな病もせず、天寿をまっとうした。


友人のベッドの下。
お気に入りのその場所で、安心して
心穏やかに静かに逝ったに違いない。


もし僕が猫なら、
やっぱりそんな風に最期を迎えたい。
お気に入りの場所で眠る様に静かに逝き、
お気に入りの毛布とキルトに包まれて、
自分の為に一晩中泣いてくれる人たちに
優しく葬ってもらうのだ。


これ以上の幸せがあるだろうか。
幸せでなかった筈はない。
猫冥利に尽きるではないか。




もう側に居てくれないという事実が
どれほど寂しくて哀しいものか、
どんな慰めの言葉をかけても
その哀しみを癒すのに何の役にも立たない事も、
心にぽっかりと空いてしまった穴を埋めるのに、
どれほど長い時間と努力が必要かも、
解ってはいるけれど。


それでも
あなたと、あなたの大切な猫の為に
もし僕に何か出来る事があるのだとしたら


今夜は泣こう。
恥じる事も、抑える事もやめにして、
あなたと、あなたの大切な猫の為、
僕もあなたと一緒に泣こう。



どうかほんの少しでも
あなたの哀しみが早く癒えますように。
あなたにそんなに深く愛されて、
幸せでなかった筈はないのだから。