邪悪を演じる人

悪役は格好良いね

友人のバレエ発表会を観させて頂いた。


友人が演じるのは、
「眠れる森の美女」のカラボス(悪の精)。
王女に呪いをかける役どころ。


黒い衣装に、繊細でシャープな振り付け。
それまでうつらうつらしていたのが、
カラボスが舞台に登場した途端、一気に目が覚めた。
舞台芸術には疎く、門外漢もいいところだが、
何の知識もない素人目に見ても
振り付けも踊りも素晴らしい出来である事が判った。
余計な知識が何もない分、
惹きつけられるものがあるのかないのかという事だけは、
はっきりと見分けが付く様な気がする。


カラボスが舞台に現れる時間はほんの僅かだが、
終わってみればカラボスの印象しか残っていない。
映画などでも悪役が主役を喰ってしまう事はよくあるが、
まさしくそれであった。
悪役が魅力的だと、物語はいっそう深みを増す。
カラボスの役どころである、「邪悪を演じる」というテーマ自体が
自分の琴線に触れるものである事を別にしたとしても、
本当に素晴らしかった。


楽屋裏で見かけた友人は、
まだ少しカラボスの気配を背負っている様だった。





子供たちの可愛い衣装や知らず知らずのうちに
頬が綻んでしまうユーモラスな振り付け、
舞台に下がった垂れ幕のドレープの美しさを観ながら、
エドワード・ゴーリーがバレエのどんなところに魅せられたのか、
ほんの少しだけ解る様な気がした。