走馬灯の様に
昨夜の事。
ドーーーン!と大きな音がして、家が揺れた。
てっきり家の前で車の事故でもあったものと思い込み、
急いで外に出てみたが
只々静まりかえって暗いだけで、何事も変った様子は無い。
何やら狐につままれたような心持ちで就寝。
今日になって
駅へ向かう途中、いつも通る道沿いの建物の
二階部分の壁が剥落しているのを知った。
ぼくはいつもその真下を歩く。
重そうなタイル張りのコンクリート。
頭の上に落ちて来たらきっと一たまりもないだろう。
人は最後の瞬間に、
走馬灯の様にこれまでの記憶を辿ると言う。
今なら何を想うだろう。
世の中何があるか解らない。
明日もこうしていられるとは限らない。
思い残す事は無いだろうか。
会いたい人、話しておきたい事、
すべてそのまま置き去りにして時が止まるのは
寂しいような切ないような
不思議な感じだな、と考えたりした。
きっと明日には忘れてしまうのだけれど。