昨夜は色々と思い出す事もあり、あまりよく眠れなかった。



随分前に電話で世間話しをしたのが最後になってしまった。
「今度肩でも揉みに行きますよ」等と言って、
結局行かなかったのが悔やまれる。
悲しいと言うよりもあまりに突然だったので
肩透かしを食った様な、置いてきぼりにされた様な寂しい気持ちになる。



先生にはとても失礼な事だろうし
勿論そんな態度で接したりする事は出来なかったが
随分と歳の離れた友人、という感覚を持ち得る唯一の人だった。
だから恩師を失ったというよりは大事な友人を失った気分。


気が乗れば馬鹿話にも付き合ってくれたし(むしろ率先して馬鹿話をしてくれた)
教師だから、と言う理由で威張ったり上から見下ろした物言いもしなかった。
そういう事が出来る人だからこそ尊敬もしたし魅力も感じた。
先生自身も小僧相手に馬鹿話をするのを心から楽しんでいたのではないだろうか。
ぼくは不真面目な生徒であったので馬鹿話の方ばかり一生懸命聞いていて
肝心なお話は聞き漏らしていたのだけれど。



大学を出て別な先生のところで助手をさせてもらい、数年して院に戻ると
「今度は教師と生徒としてでは無く一人の作家同士として接したい」と言って下さった。
そう言われてとても嬉しかったが、馬鹿話をしている時には軽口が叩けても
作家同士、等とはとても思えなくて、どこまでも先生は先生のままだったが。




一昨年長年助手を勤めさせていただいた先生もお亡くなりになったので
これで心から 先生 と呼べる人は一人も居なくなってしまった。