イラストレーターのかなもけんさんが描いて下さった家族の肖像。



チィさんのお骨を抱いて戻った日、真ん中のチィさんの絵が届き、
とても嬉しくて、本当に嬉しくて、
それから長い間枕元に置いて、毎朝毎晩この絵を眺めていた。
壁に掛けてからも、ふとした瞬間、何とはなしにこの絵に目がゆく。
真っ白な陶器の骨壺の中には、乾いた骨があるだけでチィさんは居ないけれど、
この絵の中にはチィさんが居る、と、はっきりと感じる。


かなもけんさんは僕と妻の肖像も描いて下さっていて、
先日個展を開かれた後、僕たちの絵も贈って下さった。
それでまた家族が揃って、壁に並んでいる。


チィさんが居なくなってから八ヶ月が過ぎた。
夏の暑い日には床で寝そべっているチィさんを想い、
寒くなれば布団の中で丸くなっていたチィさんを想う。
雨の日には雨の日の物憂げなチィさんを、
日差しの暖かな日には窓辺で大きな欠伸をしながら日向ぼっこするチィさんを想う。
その様にして毎日が過ぎてゆく。


ペットロスにはならなかった。
なっていない、と思う。
今でもチィさんの仕草を思い出しては笑い、
柔らかな撫で心地を掌に感じる。
本や映画の中で、失った者のことを「彼等は心の中に生き続ける」
という様な台詞を目にする度、そんなものは綺麗事にすぎない、
と何処かで考えていたけれど、今は少しだけそれが解る様な気がする。


壁に揃って肩を並べたことで、何か少しだけ腑に落ちたというか、
自分の中で少し気持ちが片付いた様に思う。
ことあるごとにチィさんの事を思い出しはするけれど、
哀しい、寂しいという気持ちよりも、楽しかったことの方がずっと大きくて、
別れの僅かなほろ苦さなど些末な事、と、そう言える日がきっと来る様に思う。


かなもけんさん、本当にありがとう御座います。