チィさんがお世話になった病院へ、御礼の御挨拶に行く。
入り口でお茶菓子を渡して頭を下げると、
まだ病院の奥にチィさんを預けているような、
不思議な気持ちになった。


帰りのバスを待ちながら、どうしても
最期にチィさんを迎えに行った時のことで頭がいっぱいになる。
僕は手を触れていたくて、何度も何度も小さな額を撫でた。
まだ少し暖かい気がした。
それはもう、チィさんの容れ物だったなにか、に
なってしまっていたのかも知れないけれど
眠っている時と何も変わらなかった。
違うのは、どんなにしつこく撫でても
うるさそうな顔をして起きてこないことだけだった。
もっと別なことを思い出せばいいのに、
どうしてだかあの時のチィさんの顔ばかり思い出す。


もう一週間が過ぎた。
まだ一週間しか経っていない。


時々、まだチィさんは何処かに居て、
そのうちまた戻って来るような気がする。
そして、ああ、やっぱりもうこの家には戻って来ないのだ、と気がつく。
今頃何処でどうしているのだろうという様なことも考える。
考えてみても仕方のないことだが、どうしてもやめられない。