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天気予報では崩れると聞いていたのに、
カーテンを開けてベランダから外を見ると日が射して明るい。
もう一度高山まで出掛けてみる事にした。
古い街並みをまた漫ろ歩くか、それとも別な処へ行ってみるか、
結局決めずに高山に着いて、タイミングよく来たバスに乗り込んだ。
飛騨高山美術館へ行ってみる事にした。
昼食を摂り、ルネ・ラリックエミール・ガレの硝子作品を観る。
マッキントッシュの椅子や見事な調度品を観る。


美術館の後は近くのテディベアが展示されている施設の売店だけを覗いたり
アンティーク館の売店を冷やかしたりしながら、
飛騨民俗村・飛騨の里へ向かった。
合掌造りの家々が観られるというのだけれど、
外観はどう観ても廃村そのもので、正直怖い。
入り口には「農村気分を満喫!」と書かれた立て札が掛かっている。


中に入ると客もまばらで閑散としている。
合掌造りの家々を廻って似非心霊写真ごっこなどしながら歩いた。
多くの家が床の間の飾り物も囲炉裏の炭も仏壇もそのままで、
まるで廃墟そのものの様だ。
暗い階段を上って二階へ上がれる家もあり、
何処か他人様の家に忍び込んでいる様な後ろめたさを感じる。
傾斜のきつい坂道もあるから、
入り口で高齢者用の電動カートの貸し出しをしているのだけれど
少し歩き疲れて来た頃に、老齢の御夫婦が電動カート
悠々と坂を登って行くのを羨ましがっていたら、
御婦人の方のカートが側溝の溝に車輪を踏み外して目の前で横転。
御婦人が側溝に消えて行った。
慌てて駆け寄ってカートを持ち上げ、大丈夫ですかと声を掛けたら
御婦人は照れ笑いしながら側溝から出て来た。
水は流れていなかったけれどゴツゴツとした岩肌で、
頭も打たず怪我一つなかったのは奇蹟だ。
気付かず先に行ってしまっていた旦那さんも慌てて駆け戻って来た。
熊といいこの転倒といい、驚かされる事の多い旅だ。


怪我がなくて良かったねえと話しながら
近くの木挽き小屋の前にある立て看板を見たら、
何やら不思議な注意書きがある。

何故他の人の後を絶対に歩いてはいけないのか。
何故一人分の所有面積までが事細かに指定されているのか。
その説明は何処にもない。


最後に寄った神社の苔生した小さな狛犬が可愛らしくて、
まるでアイドル撮影会の様に色んな角度から写真を撮りまくったのだけど、
僕のコンパクトカメラはもう古くて、あまりよく写らない。
旅に持って行けてまともな写真が撮れるカメラが欲しくなった。


色々見て廻っているうちにほんの少し薄暗くなって来て、
冗談で「そろそろ最後のバスが来ちゃうかも」と言ったら、
本当に四時台のバスが最終だった。
慌ててバス停へ向かう。
高山駅に戻って駅前のラーメン屋で腹拵えし、
帰りは高速バスを使って戻る事にした。
早いし楽でその上料金も安い。
また来る機会があれば今度はバスを使う事にしようと思う。