友人が去る日。
近所の友人も暇乞いにやって来て
朝日が差し込む窓辺で一緒に珈琲を飲み
暫し別れを惜しむ。
滅多にない機会だからと互いを写真に収める。


荷造りを済ませ、上着を着て出発の準備を整えた友人に
最後にチィさんを渡して抱いてもらう。
「また会おうね、チィさん」と友人が言う。
「また会いに来てやってね」と僕が言う。


「またね」という言葉は、ほんの数年前まで
何の重さも感じさせない只の挨拶に過ぎなかった筈なのに、
いつの間にか、祈りや願いを含む別れの言葉になっていた。
別れの言葉は歳を重ねる毎に重さを増し、胸に迫る様になる。
離れて暮すという事は、きっとそういう事なのだろう。
僕にも、友人にも、チィさんにも、時の流れる速さはけして同じではない。


声には出さず、「またね」と静かに繰り返す。