村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩


出先で買って電車で読みながら帰宅。
この人は本当に話の運びが巧い。
ページを繰る度に、自分がどんどん物語に惹き込まれて行くのが
はっきりと判る。
それがあんまり巧みで可笑しくなるほどだ。
思わず電車の中で笑い出しそうになって困った。
あんまり見事過ぎて何だか可笑しくなり、
それが心地良くもある。


登場人物に繋がりがあるので、
家守綺譚の番外編とでも言うべき位置付けなのかと思ったが、
舞台が異国だからか、趣は大きく異なる。
家守綺譚のあの怪しい雰囲気は、ごく抑えられたものになっているが
只その冴え渡る筆致には舌を巻くばかり。
描かれるシーンが一々目の前に映像として広がり、
映画を観ているかの様な錯覚を覚える。


本来の自分からしたらあまり好みの話ではない様に思うのに、
どうした訳か面白くて仕方がなかった。
おまけに最後にはほろりとさせられて、
何だか口惜しいくらいに最初から最後まで思い通り操られた感がある。
ここまで見事に乗せられると読後感は只管心地良い。
改めて凄い書き手だと感じる。