何度教わってもアップルストアの事をマックショップと言ってしまう。


渋谷のアップルストアへ。
店に入る前に、近くのアンドナンドでドーナツを食べた。
帰りは重い荷物で両手が塞がるかも知れないから、
何処へも寄り道する事が出来ない。
少し腹ごしらえをしておきたかった。


買い物は数分で済んだ。
配送にしてもらうか持ち帰るかで少し迷ったが、
持てない重さでもないと判断して、手に提げて帰る事にした。


薄い本体だが一応デスクトップだし、箱に入ると意外と大きい。
11キロの荷物は、確かに持てない重さではなかったが
店を出て歩き出すとすぐに後悔し始めた。
嵩張って歩き辛い上に、取っ手が食込んで掌が酷く痛む。
おまけに退勤ラッシュが始まる時間帯で
渋谷駅は大きな荷物を抱えて歩くのが困難で
何度も箱を蹴られてよろめく。


ずっと昔。
銀座から茨城までを、持ち上げるのも精一杯という重量のものを持って
徒歩と電車で移動しなければならない事があった。
出来得る限り迅速に届けねばならない荷物だったが、
肩に担いで数歩歩き、荷を降ろして数分休み、息を整えてまた担ぐ。
そうでもしなければとても歩き続けられなかった。
途方に暮れるとか放心するとかを、初めて身体で味わった。
歩く度に荷物は重さを増して行く気がして、
とてもその日のうちに辿り着くとは思えなかった。
それほどに重くて大きな荷物だった。
何度も荷物を放り出して逃げたくなる。
自分は何故こんな事をしているのかと馬鹿馬鹿しくなる。
結局片道1時間半の道程を、5時間ほどかけて運んだ。
届け先に辿り着く頃には腕や脚の震えは自分でも笑い出したくなるほど
大袈裟なものになっていたし、次の日もそのまた次の日も
色々なところが痛んでまともに歩く事さえ困難だった。


その時の事を思い出した。
あれに比べれば、こんなちっぽけな箱を運ぶくらい、何でもないと思える。
あれが運べたんだから、こんな事、わけない筈だ。
何故こんな事を、と、ずっと馬鹿馬鹿しく思っていた経験が
意外な形で役立った。


そして今これを、新しいiMacから更新している。
まだ不慣れで戸惑う事も多いが、
時間を掛けてゆっくりと手に馴染ませれば、
きっと巧く付き合ってゆけるだろう。