大須

路地裏

実家へ帰ると必ず行く場所がある。
その昔 中学への通学路でもあった大須の商店街。


僕が詰襟を着て歩いていた時分には
半分シャッターが下りたままの古い店ばかりが並ぶ、
少し寂れた商店街だったが、最近は新しい店が増え
すっかり若者の街、といった風情。


昔からの店と若者向けの雑貨屋、古着屋、カフェなどが混ざり合って
混沌とした雰囲気を醸し出している。
僕はそういう場所をふらふら歩き回るのが大好きなのだ。


東京の高円寺や下北沢にも少し似ている。
何処が、と言われると答えに困るが、
歩き回った感じが似ているのだ。 時折同じ匂いがする。
ニューヨークへ行った時にも、同じ匂いを感じる場所が確かにあった。
それが何処だったのかもうはっきりとは思い出せないけれど、
きっと何処へ行っても、似た様な匂いを持つ通りがあるのだろう。
そして僕はそういう場所を見付けたら、
隈なく歩いてみなくてはきっと気が済まない。
そんな気がする。


名古屋へ着いた次の日、昼過ぎから時間をかけて
ゆっくりと大須を歩き回った。すぐに日が落ちて、
怪しげなネオンに灯りが燈り始めた狭い路地裏へ吸い込まれて行くと
昔とあまり変らない懐かしい光景があった。


きっと次に帰って来た時にも、僕はあてもなくこの通りを歩く。
そうして少し立ち止まり、「ああ、変らないな」と独りごちる。