冬の海

折角はてな妖怪クラブに参加させて頂いたので何か怖いお話でも。
随分前に知人が教えて下さった体験談を。



小学校に上がる前の頃、父母に連れられて祖父母の住む田舎へ行った。
祖父の家は海のすぐそばだったので、
一人で砂浜へ降りてゆき、
落ちていた小枝を手に取って砂浜に絵を描いて遊んでいた。
波打ち際で、描いてはすぐ波に洗われ消えてゆくのが楽しくて、
夢中になって描いた。


後ろに人の気配がしたがかまわず描き続けた。
後ろの気配は、暫く彼女の肩越しにじっと眺めている様子だったが、
ふいに耳元で「何してるの?」という声がした。
声があまりに近かった事に驚いて振り向くと、
そこにはいつのまにか日が傾きかけて
暗くなり始めた砂浜が広がっているだけで、
誰も立ってはいなかった。



日が短くなった冬の海での事である。




あなたの後ろにも 誰か立ってはいませんか?