昔から僕が人の夢に出て来るとロクな事は起こらない様で、
久しく会っていなかった友人から
「昨日夢の中で派手に死んでたけど、変わりない?」
などと突然連絡をもらったり、
前の晩に夢の中で働いた悪行の数々を述べ上げて責められたりする、
などという事がよくあった。
自分の夢見が良くないのは仕方がないとして、
態々人様の夢にまで押し掛けて寝覚めを悪くさせているとあっては、
自分では如何ともし難い事とは言え、何だか申し訳のない話だ。
しかも大抵は大人しく死んでいないで、
惨たらしい姿のまま何食わぬ顔で起き上がって見せて驚かせたり、
化け物じみた振る舞いで怯えさせている事が多い様で、
この点についても申し訳のない様な、少々失敬な事を言われてもいる様な、
複雑な思いでいる。
別段普段から物の怪じみた振る舞いをしているつもりもないのに、
何故だか人にそうした印象を与えてしまう様で、
そうでなければすぐにも死にそうに思われるか
煙になって消えそうとでも思われるかで、
元気一杯、陽気に爽やかな印象で人様の夢に現れる事は滅多にない様だ。
尤も僕が元気一杯、陽気に爽やかに現れたりしたら、
そちらの方が余程怖い様な気もするし、
人の夢の中で死んでおくと長生きするとか聞いた様な憶えがあるから、
これからも盛大に殺しておいてくれて一向に構わない。


僕は最近は一時ほどは悪い夢を見ない。
悪夢に悩まされるのはけして気分の良いものじゃないが、
あれにはあれで何か意味があるのだろう。
出来るだけ憶えておきたいから、
これまで通り夢日記は豆につけようと思う。