喉が酷く痛むと思っていたら、熱が出た。
臥せっていると、チィさんの事をよく考える。
横に来て不機嫌そうな顔で退屈そうに寝そべったり、
咳をすると億劫そうに頭を上げて煩そうな顔をこちらへ向けたり、
何もない座布団の上に、その仕草の一つ一つを
はっきりと思い浮かべる事が出来る。


ああ、もう本当にここには居ないんだな、寂しいな、と思う。


ちゃんと「寂しい」と思えるようになった。
何だかぽかんとしてしまって、寂しいだとか悲しいだとか、
そういう気持ちをきちんと受け止める事が出来ていなかった様に思う。
勿論今までも寂しい悲しいという気持ちはあったけれど、
それは何処か手の届かない遠くの方にあって、
他人のもののような、硝子の向こうにあるような、妙な感じだった。


寂しいと思い、悲しいと思い、
最後に小さな頭にしたキスの、柔らかな感触を思い出す。
まだはっきりと思い出せる。
それで少し、笑顔になれる。


少しづつ、前に進んでいる。