読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる


午後の面会時間に合わせて家を出、バス停へ向かう。
強い風に煽られて身体がゆらゆらと揺れる。
あまり酷く揺れるので、また目眩が始まったのだと思った。
チィさんの容態を確かめるまで倒れるわけにいかないと思い、
バス停の風除けに背中をぴたりとくっつけて凭れるようにしたら
その風除けも大きく揺れていて、それでもまだ
(今日はそんなに風が強いのか) と思っていた。
バスが着く直前、周りの建物から大勢の人たちが
口々に何か言いながら飛び出して来て、皆上の方を見上げている。
そこで漸く、大きな地震が起こっているのだと判った。
バスに乗り込むと、バスの中の乗客たちはまだ誰も地震に気付いておらず、
外の様子を何事かと見入っている。


地震だと判ってからは、チィさんの入っている酸素室は大丈夫だったろうか、
驚いてまた呼吸が荒くなってしまっていないかという事ばかりを考えていた。


病院へ着いて入り口で様子を訊ねると、
猫たちは皆地震にはさほど驚かなかったとの返事。
重症の入院患者はそれどころではないのだろう。


入院の日、今日中にも危ないと言われたチィさんは
それでもまだがんばり続けている。
痩せて針金細工の様になってしまったけれど、
死を待つのではなく、只淡々と現実を受け入れ
それを堪え忍んでいる様に見える。


苦しみを長引かせてしまっているのではないかという考えが
何度も何度も迫り上がってきて、
しかしだからといって何もせずに見ている事は出来ないのだと思い直し、
どうにかもう一度、ほんの僅かでいいから
暖かな日の下で安らかな時間を過ごさせてやる事は出来ないかと願う。