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朝になると、病院へ電話してチィさんの様子を訊く。
午後の面会時間をひたすらに待つ。


入院二日目の面会。
初日の夜に比べると幾分落ち着いて見える。
息が苦しい為に箱座りしか出来なかったのが、
前脚を伸ばし、ちゃんと目を閉じて眠っていた。
呼吸が酷く荒い時は、目を閉じることさえ出来ない様子だったので
眠れているのを見てとても嬉しかった。
預かってもらって良かった、僅かでも休息が取れたのだ、
そう思った。


三日目の面会。
短時間のうちでも容態の変動が激しいとのこと。
酸素室の前に行くとチィさんは起きていて、
すぐにこちらの方を向いて、たった一度だけ、声を出さずに鳴いた。
真っ黒な瞳だった。酷く窶れていた。
ちゃんと僕たちが見えているのだろうか。
側に居ると判ったろうか。
息をする度に頭が大きく揺れ、背中が上下するのが見える。
幾度か姿勢を変え、薄く目を開け、虚空をじっと見据えている。
様子を訊ねると、眠れている時もあるし、少し楽そうにしている時もあるとの事。


チィさんは僕たちに向かって何と言ったんだろう。
どうして欲しいだろう。
その事ばかりを考える。
これまで幾度も繰り返し考え、答えの出なかった場所に
また引き戻されてしまう。
別な選択肢があったのかどうか。
どうすべきなのか。


これしきのことで揺らぐ浅い覚悟で
本当に望みに応えてやれているだろうか。


虚ろな表情で、声も出さず、しかしはっきりと
チィさんは僕たちに何かを言った。