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小康状態、と言ってよいのかどうか、一時期の、
見ているのも辛い様なしんどそうな感じからは少し脱し、
機嫌だけはすこぶる良い。
鼓動も呼吸も早いままだし、腹部の膨らみも増していて、
腹水を疑っているが、医者は腹水ではないという。
背中や手脚はどんどん細くなり、腹部だけが丸味を帯びて重たそうだ。
食べ物や水の摂取量は変わらず、尿も出ているし、
便が少ないのは殆どが消化吸収されてしまう流動食がメインになっているのと
便秘を引き起こす活性炭剤の副作用だろう。
腹部の膨満が便秘に因るものだけだとは考えられないし、
かと言って経験豊富な獣医師が腹水を見誤るとは思えない。
輸液の量もごく少量に留めて、適切な処置が為されていると思う。


病院では再三に渡って「現状維持」が目標である事を念押しされる。
完治されるものではない事は承知しているので
その辺りの事は充分に理解しているつもりだけれど、
それでも矢張り欲が出る。
何とかならないかと毎日あれこれ調べてみても、
腎不全で腹水の症状が現れたら末期だという事、
老齢の猫に腹水を抜く処置は非常に困難だという情報しか見付けられなかった。
また腹水以外で急激な腹部の膨満が見られる場合の症例についても、
老齢で腎不全を抱えた猫に有効な対処法の様なものは
一つも見付けられなかった。


これをするとここには有効であるが別な場所に負担が掛かる、
という様な対処法しか残されておらず、八方塞がりの状態。
バランスをとりながら綱渡りをしている様な心許ない気持ちがずっとある。
そうした不安な気持ちを知ってか知らずか、
チィさんは暗い場所でじっと蹲るのをやめ、
以前の様にのんびりと日向ぼっこをし、
喉を鳴らして甘え、流動食や療法食以外のものを熱心に強請る。
何でも好きにさせてやりたい気持ちと、
少しでも一緒に居られる時間を引き延ばす為
ありとあらゆる手段を講じたい気持ちとが鬩ぎ合い、
時々どうしていいのかよく解らなくなる。


医者は、通院、投薬、食事制限、強制給餌、全て含めて
猫のストレスになる事を怖れて必要な処置を施さないのは
人間側の怠慢や無責任だという。
どこまでも手を尽くすべきだと。
勿論無理な延命措置には否定的で、
痛みや苦しみを軽減させる事が一番大事、という考えの上でだけれど。
僕もそう考え、チィさんにとってはかなり厳しい処置に
これまで耐えてもらって来たけれど、
最期の時までずっとこの体勢を続けて行くべきなのかどうか、時々疑問に思う。
チィさんはどう思ってるんだろう。



どうするのが最良の選択なのか、その事をずっと考えている。
機嫌良く日向ぼっこをして、欲しいものを強請る事が出来る今この瞬間を、
どうしてあげたら一番快適に過ごさせてやる事が出来るか。
以前の様に症状が重くなって身動きが取れなくなるのが容易に想像出来、
それは明日来るかも、今夜来るかも知れない。
迷っている様な猶予など全くない筈なのに。