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二三日だった入院の予定は、思いの外延びた。
数値はゆっくりと回復の兆しを見せ、
今日、漸く退院の許しが出た。
点滴の終わる時間を見計らって
じりじりした気持ちで病院へ急いだ。


点滴の跡や目の周りの汚れを拭いてもらうと、
少しやつれはしたが意識ははっきりとしている。
腎機能の低下は加齢によるもので、もう回復の見込みはない。
この先は毎日の投薬と定期的な通院、
口にして良いのは病院から処方された療法食のみ。
悪化を防ぐ事、出来るだけ遅らせる事に専念する。


帰宅すると、細い声で不満げに鳴きながら家中を廻り、
入念にチェックを終えておもむろに衣装棚の下に隠れた。
今日はもうどこへも連れて行かないよ、大丈夫だよ、
と声を掛けても、暗がりからこちらを不審そうに見詰め返すだけで、
なかなか出て来ようとしない。
暫くそっとしておいた。
少しして今度は押し入れに入り、すやすやと眠りだした。
疲れたろう、僕も疲れたよ、と言いながら何時間も背中を撫で続けた。




戻って来た。
後どれくらい時間が残されているのかは解らない。
それでも今は手の届く処に居て、
触れれば暖かく、こちらの呼びかけに応えて小さく鳴く。
もう、それだけで充分だ。