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飄々と独りで過ごすのが好きだったチィさんは
この一年ですっかり様子が違って、
奥さんの座っているクッションにほんの少しでも空きがあれば
そこへ無理矢理頭や尻をねじ込んで、
或いは「どうあっても」という様な仕草で奥さんの膝によじ登り
強引に居座ってしまうので、うっかり胡座などかいていると
脚の間にすっぽり嵌り込まれて少しも身動きが取れなくなってしまう。
帰って来る随分と前から玄関で帰りを待ち、
甲斐甲斐しく出迎えたりしている様子を目にすると、
これが本当に同じ猫なのかと時々目を疑いたくなる。


僕には相変わらずの冷淡さで、時々気紛れに追い駆けっこに誘ってみたり
夜中に何か文句を言いに来たりする以外は、
一定の距離を保ってじっとこちらを観察している。
膝に乗って甘えるのはこっち。文句を聞かせるのはこっち。と、
チィさんははっきりと役割分担を決めている様だ。
時々、奥さんが眠って暫くすると、奥さんの布団からもそもそと抜け出し
僕のところへやって来て、こちらを見上げて何やら不満げに鳴くのだけど、
その様子がどうも猫とは思われぬ。
段々と、気難しい婆さんに何やらお小言でも頂いている様な心持ちになって
恐縮してしまいそうになる。
奥さんに甘える時に見せる仔猫の様な表情とはまるで違う。
そんな時のチィさんの口からは、人の言葉が飛び出したとしても
少しも不思議ではない気さえする。



来年の記念日も、そうやって不機嫌そうに文句を言っててくれると嬉しい。