突然の誘いに応じて、京都から友人が訪ねて来てくれた。
歳を重ねると、段々に急な誘いに気軽に応じて下さる方も少なくなり、
またこちらも色々と気を回してしまって
なかなかに声も掛け辛くなってしまうのだけれど、
そうしてそれが少し寂しくもあるのだけれど、
だからこそそれを許してくれて、早くに起きて電車を乗り継ぎ、
こうしてやって来てくれる人が居る事が、
とても喜ばしく、誇らしい。


駅までお迎えに出て、地下街で三人分のサンドイッチを買った。
持ち帰りにして家へ向かい、チィさんと初対面してもらう。
家に着くと、早くに起きて着物を着込んだ奥さんが玄関に出て来る。
よく晴れて暖かな日で、
チィさんはいつも通り座椅子で日向ぼっこをしていた。
初対面の方にも少しも動じず、
いつも通り無愛想に眠たげな一瞥を投げかけるだけ。
しかし僕は、それがチィさんの一番の歓迎だという事を知っている。
いつも通りで居る事。それがチィさん流の受け入れ方だ。
友人が手を伸ばしてそっと撫でる。
チィさんは少しも驚かない。
日差しを浴びて目を細めたまま、
寝ているのか起きているのかよく判らない顔をしている。
だけど横たわったお腹がゆっくりと大きく上下しているのを見れば、
離れていても満足げに喉を鳴らしている事が判る。


サンドイッチをつまんで簡単に腹拵えをしてもらった後、
大須へ出掛けた。
水曜で休みの店が多く、他にもっと気の利いた処でも知っていれば
別な場所へもお連れしたかったのだが、
折角訪ねてもらったというのに
地元の癖に気の利いた店や場所にさっぱり不案内で、
面白そうな処へ連れて行けないのが心苦しい。


開いている店をいくつか覗いて、公園でタピオカミルクを飲んだり
先日賽銭泥棒を見掛けた御稲荷さんで写真を撮ったりした。



晩御飯はうちの近所の店を予約しておいたから、
夕方頃に一度家に戻り、脚を休めてから店へ向かった。
ひつまぶしを三人前、おばさんが大きなお櫃を
しゃもじで思い切りかき混ぜて、それぞれのお茶碗によそってくれる。
うっかりしていて、女性二人なのに正直に人数分注文してしまった。
ひつまぶし二人前と何か別なものを少し頼めば丁度良い量の筈だったのに、
三人前のひつまぶしは驚くほどたっぷりあった。


一日中引っ張り回して脚が草臥れたろうとタクシーを拾い、
駅へお見送りに行く。
駅前のロータリーからクリスマスの賑やかなイルミネーションが見えた。
タクシーの運転手さんはイルミネーションが年々つまらなくなると嘆いていた。
今年は余所から見に来る人も少なくなっているらしい。

それでも近くで見るイルミネーションは充分過ぎるほど眩しく、
賑やかだった。



また来て貰えるといいな、と思う。
今度はゆっくりと。
一緒に夜更かしして真夜中にお茶を淹れて飲んだり、
甘いものを食べたりしたい。
チィさんに踏まれたり、添い寝されたりしてみて欲しい。