下呂にあるホテルの宿泊券を頂いていたのを思い出し、
有効期限の切れる前にと旅行を計画した。
こんな事でもないとなかなか旅行へなど行けない。
下呂へ行くのは初めてで、下調べも不十分だったのだけど、
観光地なのだろうし行けば何かあるだろうという様な考えで
あまり気負わずぶらりと出掛けた。
最初に高山まで行ってしまって、夜になったら下呂の宿へ戻る事にして
電車に揺られていたら、飛騨の辺りで山の斜面に熊が居るのを見付けた。
どこからどう見ても熊で、しかも民家のすぐ側だった。
そんなに大きくは見えなかったが、
まさか車窓から野生の熊が見られるなんて思ってもいなかったから
驚いて暫く思考が停止してしまった。



高山駅で電車を降りて、すぐに蕎麦屋へ入り、飛騨牛蕎麦で腹拵えをした。
高山の古い街並みを歩くのは面白かった。
飛騨団子を食べて、五平餅を食べて、割れ煎餅と蕨餅を買って、
それから奥さんは赤い和蝋燭と黒鉄の蝋燭立てと、
真工藝のぬいぐるみで、木綿に木版の手刷りて柄を入れ
中に籾殻を詰めた干支の鼠と鶏の民芸品を買った。
僕は同じ細工の翡翠(かわせみ)だろうか、
お腹に沢蟹が描かれている綺麗な鳥を買った。


ゆっくりと出掛けて来たのですぐに夕方になった。
平日だからか人通りは少なく、お店もどんどん閉まる。
奥さんが行きたかったらしいイタリア料理の店を探し回っているうちに
すっかり暗くなって道に迷った。
やっと辿り着くと店は閉まっていた。
ホテルに連絡して食事を用意しておいてもらい、
迎えの車も頼んで下呂へ向かった。
着いてすぐに食事を済ませ、ゆっくりと温泉に入る。
露天風呂に入っていたら冷たい雨が降り出した。
頭が冷えて気持ちがいい。


部屋へ戻り、明日は何処へ行こうか、と話しているうちに眠くなった。