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鮮明に記憶に残る様な悪夢を暫く見ていなかったのだけれど
このところ幾つか立て続けに寝覚めのよろしくない夢を見た。
一つは虫に関するもの。
もう一つはかなりオカルト的なもの。

  • 虫に纏わる夢

化粧品会社の新製品を企画開発していると思われる建物に
奥さんと共に忍び込んでいる。
照明を落とした暗室の様な部屋の中心に
ブラックライトに照らし出された円卓があり、
その中央にゲル状の透明なものに満たされたシャンパングラスが置かれている。
同じ様な無機質な部屋が幾つも連なっていて、
僕は一人で隣の部屋の様子を確認しに行く。
テーブルの上で何か蠢くのが目に入った。
近づいてみると、小さな透明な硝子の器に触覚と脚が生えた虫が
シャンパングラスの中に吸い込まれてゆくところだった。
そのままシュウシュウと音を立てて消え、
先程目にしたゲル状のものに変化した。
嫌な予感がして隣の部屋に残して来た奥さんの元に駆け戻ると、
奥さんは嬉々としてシャンパングラスの中のものを顔や身体に塗りたくっている。

  • オカルト的な夢

今の住まいを人に貸し、別な場所で暮らしていたが、
貸した相手がよろしくない人物であった事が発覚。
その人物はすでにこの世のものではないらしい。
双子の姉が被害に遭ったという女性に懇願され、
彼の人物のしでかした事の後始末をしなければならない。
姉は彼の人物に殺害された後も長い間慰み者にされ、
遺体を回収して弔ってやらなければとても成仏出来ないという。
正直なところ気が進まなかったが、如何にも憐れな話であるし、
現場となった家の所有者ということもあってどうしても断る事が出来ない。
(無秩序な社会になっていて警察等の機関は機能していない模様)


女性と奥さんを伴い、渋々部屋の様子を確認しに行く。
玄関を開けると、それまで怯えた様子だった女性が
「姉さん」と叫んで中に飛び込んでしまった。
家の中は真っ暗で灯りも点かない。
気味悪がる奥さんを玄関に残し、
用意してきた小さな懐中電灯で足許を照らしながら中へ入る。
廊下を進んで応接間へ行き、奥を照らすとそこに女性の遺体があった。
髪の色は抜けて灰色をしており、屍蝋化して肌も真っ白になっている。
肘から先や下半身は腐敗が進んだ為切断したのか残っておらず、
切断面に包帯の様な布を巻いて何かで塗り固めた痕跡があった。
凄惨で痛ましく、何とかしてやらねばならなかったが、
部屋の中は色々な物が散乱しており、暗過ぎてどうにも足許が危ない。
日が昇るのを待ってもう一度出直そう。
そう思って先に家の中に飛び込んだ女性を呼ぶのだが、返事がない。
探す為に奥へ進むと、和室の方から笑い声が聞こえる。
ゾッとして足が竦む。
正気を失っているのだ。
薄暗がりの中で、彼女が何か大きな刃物をゆっくりと拾い上げ
手に捧げ持っているのが判った。
この状況で無事に連れ出すのは難しい。
只ならぬ状況を察知して玄関から奥さんが何事か叫ぶ。
和室からザザッと畳を擦る音がした。
玄関の方に向かっている。
慌てて引き返し、奥さんを先に外に出そうとして
玄関のドアノブに手を掛けたが、
渾身の力を込めて捻ってみてもびくともしない。
何者かが外からドアノブを掴んで押さえている様だ。
死にものぐるいで何とかドアをこじ開けた途端、
それまで慌てふためいた様子で外へ逃れようとしていた奥さんが
僕の腕を掴んで引き戻そうとする。
驚いて振り向くと、髪は先程の遺体の様に白くなり、
その目も真っ白で瞳がない。
ケタケタと笑いながら僕を家の奥へ引き摺って行こうとする。
尋常な力ではなかった。
揉み合いながらも何とかマンションの廊下へ連れ出す事が出来た。
エレベーターホールに出た途端
奥さんの様子は何事もなかったかの様に元通りになったが、
今度は廊下の様子が一変していた。
埃が積もってありとあらゆる家具が散乱し、
もう何年も誰も足を踏み入れていないかのような有様だ。
兎に角外に出ようとエレベーターのところへ行くと、
場に不釣り合いな色鮮やかな紫色のドレスを着た太った女が立っていて、
「エレベーターは動かないよ」と言うなり、
高く張りのある声で賛美歌を歌い出した。
時折音程が歪んで行くのが薄気味悪く、
それ以上彼女に何かを尋ねるのも憚られる。


この辺りで目が覚めた。
部屋の中はまだ薄暗く、久し振りに起きてからも暫くの間
微かに“怖い”という気持ちが残っていた。
前日に何か怖い読み物や映画を愉しんだという訳でもなし、
思い当たる事はない。