銀行へ。
不慣れな手続きに戸惑ってばかり。
ATMの操作に慣れる事が出来ない。
頼むからピーピー煩く鳴かないでくれ。
そんなに急かさないでくれ。
血の通わない声で
ああだこうだと指図しないでくれ。



何十年も前の鍵をそのまま使っていたので、
錠前屋を呼んで新しい補助錠を取り付けてもらう。
ドアが鍵だらけになった。
尤も何か起こって困るのはナマモノだけで、
盗られるような物は何もない。


鍵屋さんの話では、最近の泥棒は
もうピッキングなんて面倒な事はしないらしい。
電動工具でドアに大穴を開け、
そこから腕を差し込んで鍵を開けてしまうそうだ。
そんな事をされたのじゃ、補助錠をいくら増やしてみたところで意味がない。
補助錠を取り付け終わったところでメインのドアノブに付いている鍵に
そろそろ寿命が来ている事が判明。もう随分と旧い物だから、
いつ故障してドアノブが空回りするようになるか判らない。
また近々交換をお願いしなければならない。




食事会に招待していた友人から
急な事情が出来て欠席しなければならなくなった事を詫びる電話。
温厚で、しかし理不尽な事を嫌う友人が
これまでどれほど耐えて来たかを思うと悔しい。
きっとこの電話だってどれほど掛けるのを躊躇ったろう。
僕ならほんの少しも我慢出来ないだろう事を
彼は何年も耐えた。
話を聞く度、これほどの理不尽が許されるか、と憤った。
いつも友人は笑い話の様に話すのだけれど。
笑い飛ばしてしまわなければ
とても耐えられなかったのかも知れない。


心の中で、ちくしょう、ちくしょうと繰り返す。
電話の向こうから、まだ小さな御子息の
可愛らしい声が聞こえる。
友人が携帯を渡すと、小さなおずおずとした声で
「カエルの唄」を披露してくれた。
ちくしょう、ちくしょう、どうしてこの人たちが
理不尽な目に遭わされなくちゃいけないんだろう。




持ち帰らされた仕事を徹夜で仕上げ
ふらふらしながら出社した奥さんが
目を泣き腫らして帰宅。
すぐにシャワーを浴びに行ったけれど
風呂場から嗚咽が聞こえてくる。


ちくしょう


理不尽なり


立場の弱い者から搾取する事しか頭にない。
まるでこそ泥の様だ。
保身を図るやり方が巧妙で悪質だ。
こそ泥より性質が悪い。
そして微塵も思い遣りがない。


買っておいた饅頭を差し出すくらいしか
してやれる事がない。


ちくしょう