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元来、人前で挨拶口上を述べるなどという事は
最も不得手とするところであるから、
これまでありとあらゆる努力をして
どんな労力も厭わず、全身全霊を傾けて
必死の思いで逃げ回って来たのだけれど、
当事者である今度ばかりはそうも行かぬ。


観念して臨まねばならないが、それでも出来得る限り、
マイクを握らねばならない機会は少なく、話は簡潔に済ませたい。
伝えたい事、伝えねばならない事をよくよく吟味して要約すれば、
「ありがとう御座います」と御礼をする事と、
「どうぞこれからも宜しくお願いいたします」
というお願いをする事なのだけれど、
それだけでは招かれた方も何が何だかさっぱり訳が解らない。
だからといって馴れ初めなど人前で申し述べるのは真っ平御免なので、
何をどう話したものか困ってしまう。
困った挙げ句に逃げ出したくなって、
客席の側に混じってカメラでも構えて参加者を写真に収めていたいとか、
参加者全員にゾンビメイクで来場して貰って「ぁ゛〜〜〜」だの
「ぅ゛〜〜〜〜」だの言いながら出てくる料理を食い散らかしたり、
マイクを握っても「ぁあ゛ぁ〜〜」とゾンビ語で御挨拶が済めば
気も楽なのに、とか、叱られそうな事ばかりを空想している。


人前に出る、という才にもうほんの少しだけでも恵まれてさえいれば、
どなたにも失礼のない様にそつなくやってのけられるのだろうに、
まだ少し日もあるのに、もうしくしくと胃が痛み出した。
全く情けない。
このままでは当日はノーメイクでゾンビ役が務まりそうな具合だ。