式場の打ち合わせに出掛ける。
担当の方は痩せて小柄な男性。
二十代後半といったところだろうか。
始終笑顔で時々冗談を交えながら、手慣れた様子で話を進める。
愛想は良いのだが、笑顔が何処となく死神ぽい。


慇懃な死神に色々と相談をしながら
食事会の段取りをして行った。
テーブルクロスやナプキンの色、
食事のメニュー、何をして何をしないのか。
決めておかなければならない事が多過ぎる。
分厚いカタログを広げて色々と勧めてくれるのだけれど、
一々奥さんと顔を見合わせて首を傾げ、
「…いりません… けっこうです…」と断る。
あまり趣味の宜しくない巨大なケーキにナイフを入れるのも、
毒々しい蝋燭に火を灯すのも、したい事とは違う。
家族や親しい友人たちと集まって、
皆で一緒にテーブルを囲んで穏やかな時間が過ごせれば、
それだけで充分だ。


多くの方が遠方で、招くのを随分と躊躇ったけれど、
友人たちは皆快く集まってくれると言う。
それがとても嬉しい。
皆が食事をするのを少し離れて部屋の後ろから
じっと眺めていたい様な気持ちになるが、
今度ばかりはそうもいかない。


本当にささやかな事しか出来ないけれど、
全員顔を揃えて食事をするなんて
きっと次はどんな機会になってしまうか判らないのだから、
寛いで貰えると良いな、楽しんで貰えると良いな、と思う。