七月が終わる頃、夏物の黒いスーツを探しに出掛けた。
季節がどんなに暑くても懐は年中真冬の様な有様だから、
冠婚葬祭全てに使えて普段も着られるスーツが望ましい。
夏物処分で半値に値引きされているものも多く、
もうこれでいいやと試着してみるのだけれど、
どれも細身で肩や胸が苦しい。
ボタンが留まらなくて鏡を見るとまるでフランケンシュタインの怪物みたい。
背が高いわけではないから、サイズを上げると
ハーフコートの様に丈が長くてみっともない。
どうしてこうも細身の服ばかりなんだろう。
どうして僕の肋骨はこんなに幅が狭くて厚みばかりあるんだろう。
吊し売りの服はどれもサイズが合わない。
正方形に近い様なシルエットのものでなければ
まともに着て歩く事も出来やしない。
全く不自由だ。


近頃は作務衣を好んで着る様になった。
伸び放題の髪を後ろで束ねて下駄を履いて歩いていると、
いんちき陶芸家にでもなった様な気分だ。
胡散臭いことこの上ない。
それでも涼しくて快適なものだから、作務衣を着る。
着てみるととても機能的に出来ているのがよく解る。
藍染めの少し良い物が欲しい。
浴衣は今年も袖を通さず仕舞いになってしまうだろうか。
長過ぎる丈をまだ直しに出していない。