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次兄がクリエイターズ・マーケットというのに誘ってくれたので
母と奥さんと一緒に出掛ける事にした。
次兄とは十も歳が離れているのに
幼い頃から喧嘩ばかり繰り返して、
仲良く遊んだという記憶が一つもない。
顔を合わせればすぐにどちらからともなく小突き合いが始まった。
それは僕が中学に上がる頃になるまで続き、
そのお陰で僕は中学に上がる頃には
体力や身長差のある相手と喧嘩をする事に
すっかり慣れてしまっていた。
周りの友人達よりも幾分短気で手が早かったのも、
十離れた兄と毎日の様に喧嘩を繰り返していた所為が、
多少あるのではないかと思っている。


その兄が帰郷する為の引越荷物の運搬を引き受けてくれて、
最近では時々作業場からの帰宅を車で送ってくれる。
互いに年を経て変わったという事なのだろう。
今にして思えば、ほんの子供だった僕と兄とでは
喧嘩らしい喧嘩になろう筈もなく、兄は生意気なチビ助を
ほんの少しからかってやるくらいのつもりでいたのだろう。
一方僕の方ではいつも本気で立ち向かって行くものだから、
兄も引っ込みがつかなくなる。
それでも随分と手加減をしてくれていたのだろうと思う。


奥さんにその事を話すと、二人を見ていると少しもそんな感じがしない、
いたって穏やかな兄弟仲に見える、と評される。
奥さんには二人の弟さんがいて、僕は男兄弟と言えば
何処も毎日喧嘩を繰り返しているものだとばかり思い込んでいたから、
喧嘩をしているとこなんて見たこともないと言われて非常に驚いた。
考えてみれば長兄の息子達もとても仲が良くて、
殆ど喧嘩などしなかったという。
それなら僕はどうしてああも毎日
喧嘩ばかり繰り返していたのかと思い起こしてみるのだが、
気短かな性質はどうやら父方の祖父から受け継いだものらしい。
次兄も多少そうした性質を受け継いでいるかも知れない。
最近母から、心穏やかに暮らせという旨の自己啓発本を何度も薦められた。
僕はその手の本が大の苦手だから逃げ回っていたら、
母は僕に読ませるのを諦めて次兄にその本を読ませた様だ。
母に感想を求められた次兄が無感動に「似た様な本なら何冊も家にあるよ」
というのを聞いて、矢張り兄弟だなあと思う。
啓発本に少しも啓発されない頑固さや意固地なところが似ている。
兄も矢張り「啓発本に啓発されてしまう自己とは何だろう」と
考え込んでしまうのだろうか。




クリエイターズ・マーケットは、手作りでオリジナルの作品や商品を持ち寄って
展示・販売するというもので、デザイン・フェスタに少し似ている。
規模は小さいけれど、デザフェスで見掛けた人達も多く参加していて、
去年一昨年とデザフェスで鹿革の鞄や革財布、
ブックカバーを譲って頂いた革職人さんも来ていて、
クリマでは革のブレスレットを買った。
見覚えのある革財布を取り出して代金を支払うと、
嬉しそうに笑ってそれを受け取る。
客としてではなく、出店する側として参加してみるのも
楽しいかも知れないと思うが、販売するものをよく吟味して決めなくては、
そのまま持ち帰る事になりそうだ。
どうしても多少値の張るものになってしまう銀細工は、
何処もあまり売れていない様子だった。