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その日駄菓子屋の棚を物色していて見付けたのは
少し不思議な物だった。
ごく小さな瓶に、仁丹よりもまだ小さな
銀色の金属球の様なものがぎっしりと詰められている。
まるで金属の様に見えるのに、それが食べられて
しかも甘いのだと知ると、僕は何だかとても嬉しくなった。
ズボンのポケットにその小瓶が入っている事も、
小瓶を振って銀色の粒がさらさらと音を立てるのもお気に入りだったし、
時々その銀色の小さな粒を掌に取り出しては眺め、
口に放り込んで噛み潰すのが大好きだった。


アラザンという名も、それが本来は
ケーキの飾り付け等に使用されるものだという事も知らず、
瓶の中で転がる銀色の粒を眺めるのに飽きる事もなく。


兄貴の引き出しを物色して小瓶に水銀を入れたものを見付けた時、
水銀の粒を躊躇せず掌に出してしまったのも
アラザンの白く光る様な銀色が、水銀のそれによく似ていた所為だ。
水銀の粒は僕の掌から転がり落ちて、畳の上で散った。
もう二度と、拾い集めて瓶に戻す事は出来なかった。