まだ暗いうちに家を出て羽田へ。
早朝の便で新千歳空港へ飛ぶ。
飛行機に乗るのが随分久し振りで、
どんな感じだったか飛び立つまで思い出せなかった。
乗ったのはとても小さな機で、ガタガタとよく揺れる。
加速するのも高度を変えるのも一々直接身体に伝わって来る。
それが遊園地の遊具の様で楽しい。
落ちればこの世とおさらばになる遊具だけれど。

楽しい所為か時間をとても短く感じた。一時間半と聞いていたから、
丁度新幹線で名古屋まで行くのと同じくらいか、と思っていたけれど、
窓の外を眺めていたらあっという間だった。
雲の上を歩けそうな気がした。


この日の札幌は快晴で寒過ぎず快適。とても過ごし易い。
街中を色々と案内してもらい、人と会ってカフェでお茶して
滞在中ずっとお世話になるお家へと向かう。
初めてお邪魔するお家で多少、というか
実のところはかなり緊張していたのだけれど、
暖かく迎え入れて頂けて嬉しかった。
このお家にはソマリの“はゆちゃん”がいて、
着いて早々に僕の膝で爪研ぎをした。
それほどに屈託なく無邪気な、仔猫らしい仔猫。
目を丸くして飛び跳ねて、本当によく遊ぶ。
気難しい顔をして物思いに耽ったり、
急な来客があったからといってハンストしてみたり篭城したりしない。
チィさんを見てると忘れがちだけれど、
猫って本来こういう生き物だよな、と思い出した。


晩御飯を御馳走になり、居間でお借りした漫画を読んだり
はゆちゃんと遊んだりして過ごす。
高校三年と小学六年の男の子がいるのだけれど、
二人ともとても穏やかで優しくって、
自分がその年頃だった頃の事を思い起こして
何だか少し恥ずかしい様な気持ちになる。
僕は小学生の頃には歳の離れた兄と流血沙汰の大喧嘩ばかりしていたし、
多分その所為でとても気の荒いところがあって、
同い年の子たちよりも手が早く、加減というものを知らなかった。
高校生の頃には妙に神経質で、何にでも怒っていて、
ギスギスした嫌な子供だった。
何かを暖かく迎え入れたり寛容に振る舞ったりなど、程遠かった。


このお家は隣で珈琲とパッチワークのお店を開いていて、
居間からドア一枚隔ててカフェに行く事が出来る。
こぢんまりとした感じの良い空間に、カウンターとテーブル。
色んな柄の布地や雑貨が並べられている。
カウンターで御馳走になる珈琲がとても美味しくて、
そこで夜中にこっそり吸う煙草や頂いたお酒、
流れて行く時間が心地好くて、
滞在中何度もカウンターに座ってはぼーっとしていた。
きっと近所にこんな店があったら入り浸ってしまうだろう。


東京に戻って来てからも
あのカウンターに座ってゆっくり煙草が吸いたい、
あの珈琲が飲みたいと何度も思い起こす。


行く前にやってしまったぎっくり腰は、小康状態。
サポーターとボルタレンの湿布薬で、日常生活に支障はない。