新丸ビル七階、自由が丘グリルにて食事。
少しも御馳走して頂く様な立場にないにも関わらず、
御馳走になってしまった。
無遠慮にもほどがあるが、場に不慣れでどうしてもあたふたしてしまう。
いいかげんもう少しスマートに適切な振る舞いが出来ないものか。
照れてもじもじしていても可愛いなどと言って許して貰える時期は
とっくのとうに過ぎてしまったので、もっとしっかりと礼節を弁えた振る舞いがしたい。


店を換えてお酒を一杯頂く。
メニューの中に以前から気になっていたシャルトリューズのグリーンがあり、
これを飲んだ。
強い甘味としっかりしたハーブの香りが心地良く、好みに合う。
僕にとっては少し値の張るお酒だから、味見もせずにボトルを買う勇気はなかったが、
これなら、この味ならこれからは迷わず買い求めたいと思う。
一緒に行った方もお気に召された様子で、
ゆっくりと味わって美味しそうにグラスを傾けていた。


少しだけ酔って、やっと少し舌が廻る様になった。
正直なところ、食事中は緊張して、黙りこくったまま
皿だけを睨んで只管食べていた様な気がする。
ガツガツ食べて呆れられたのじゃないかと不安になる。
気が付いたら目の前の皿は、舐めた様に綺麗に空になっていた。


少し酔って、漸く顔を上げてみたら、
そこには柔らかな笑顔が二つ並んでいた。
あ、似てるな、と思う。
いいなあ、と思う。
僕は笑うのが下手だ。