唸り声

自分の唸り声に驚いて目が覚めた。
体調が良くないと寝ながら唸る癖がある様だ。
矢張りこれも寝言というのだろうか。
当然夢見も悪く、最悪の気分で目覚める。


医者に処方された薬はよく効きはしたが、
それ以上に副作用が強く出てしまい、服用し続ける事は出来なかった。
熱は一向に高くなる様子もなく、ただ咳だけが酷くなって、喉や腹筋が痛む。
熱もないのだから大人しくしていればすぐに治まるだろうと甘く考えていたら
あっという間に一週間が過ぎた。
そろそろ何とかしたい。




二十二日、深夜。
郷里の友人からお父上が御逝去されたとの知らせ。
年末に帰省した際にはお元気そうにしておられたのに。
いつも通り友人が軽く悪態をつき、お父上は飄々としてそれを遣り過ごす。
そうしたやり取りを見ながら、その親密さをいつも羨ましく思っていた。


誰にでも別れは突然訪れるものだという事を忘れてはいないし、
それなりの覚悟もしているつもりだけれど、矢張り堪える。
友人は泣き言も言わず強がって見せたが、その声は沈んでいた。
その声を聞いたら僕は言葉に詰まって、ろくなお悔やみも言えなかった。


死別に限らず、人と関われば必ず別れが色々な形で訪れるが、
矢張り、辛くない別れは一つもないな、と思う。
仕方のない事なのもよく解っているつもりだけれど。


見送ってくれる人たちが居たのだから、きっと寂しく逝ったのではないだろう。
残された人たちの寂しさが早く癒えるといい。
心から御冥福をお祈りする。