屋上の妖精

昨日新宿をぶらついた時に、天気も良かったので
伊勢丹の屋上で暫く日向ぼっこをした。
ベンチに腰掛けてぼんやりしていたら、
小さな男の子がトコトコと視界に入って来た。
こちらを向いて細い首を傾げ、にこにこしている。
二歳になるかならないかくらいだろうか。
とてもとても小さくて、華奢な感じの子だった。
佇まいがあんまり華奢で儚げなので、何処か人間離れして見える。
きらきらと日が降り注ぐ中を、はしゃぎまわる他の子たちには混じらず
只にこにこしながら、一人楽しげに空を眺めたり
しゃがんで地面を見詰めたりしている。
その度に柔らかそうな茶色い髪が揺れ、日の光を受けてきらきらと輝いた。
その下の笑顔は、妖精か何かの様な不思議な雰囲気があって、
どうしても気になって目が行ってしまう。


母親らしき人は隣のベンチで携帯で話すのに夢中で、
坊やの方をまるで見ていない。
それで何だか余計に坊やの様子が気になってしまって、
彼が一人でどんどん歩いて行って物陰に姿を隠してしまうと、
もうそれ切り何処かへ消えてしまって
二度と戻って来ないのじゃないか、という様な
妙な考えが浮かんで、少しはらはらした。
暫くしてにこにこしながらまた姿を現すと、ほっとする。


きらきらした日の光に融けて消えてしまっても
ちっとも不思議じゃないくらいに、
本当に妖精か天使みたいに可愛らしい子だったのだ。


どんな大人になるんだろう。
あんな風なまま大人になれたら素晴らしいけれど、
きっと世間は生き辛いのだろうな、等と余計な事まで考える。