暗い川岸に立っている。
とても大きな河で、向こう岸には街灯りが見え、遠く微かな喧騒が届くが、
自分の周りは緩やかな水音が聴こえるのみで、何処までも暗い。
足許にはごろごろと丸い小石が沢山落ちていて
背の高い雑草も生えておらず、見通しが利く筈なのに、
何処まで歩いてみても向こう岸へ渡る為の橋は見えて来ない。
心細くなって哀しかったが、それでも川に沿って歩き続ける他なかった。


もうどれくらい歩き続けただろう。
夜はいつまでも明けず、周りの景色も一向に変わって行く様子はない。
橋を渡るのを諦めて川岸に立ち尽くし、
途方に暮れて只々向こう岸を眺めていた。
街灯りがゆらゆらと揺れて、微かに届いていた喧騒が消え、
静かな水音だけが周りを埋め尽くす。
それに耳を傾けているうちに、自分の輪郭が曖昧になって闇に溶け出し、
少しずつ消えて行ったが、もう心細くはない。
段々と遠くなる街灯りは懐かしく、そこに何か忘れ物をして来た様に思うが、
すぐにそれも忘れてしまった。
寂しい様な哀しい様な何かの欠片だけが、川岸に残される。


ああ、そうか。
小石だと思って踏んでいたのが