癖が強過ぎて流石に馴染めないかと思ったペルノーだったが、
今夜は妙に美味いと感じる。
癖の強いものほど、馴染んでしまえばやめられなくなるものなかも知れない。
お酒に限らず。


弱い癖に薄めて飲むのは苦手なので、
ロックでほんの少しの量を舐める様に飲むのだが、
度数が高い所為かアニスの効果なのか、味覚が少々麻痺する。
ペルノーを飲んだ後でいいちこを飲んでみても、
舌が痺れていて味が全くと言っていいほど判らない。
このお酒は最後に飲むようにした方が良さそうだ。


今日は一杯目をストレートで、グラスに氷砂糖を入れて溶かしながら飲み、
半分ほど飲んだところでで氷とミルク、ミントリキュールを注いで残りを飲んだ。
こうするとアニスの香りが和らいで甘味が強まり、飲み易い。
味が判らなくなってしまうからと先にいいちこをほんの少し飲んでおいたら、
やっぱり急に酔いが廻る。


昨夜もいいちこを少し飲み、その後でペルノーを飲んだら
急に頭がぐらぐらし出した。
ぐらぐらした頭で、階段の上の蛍光灯が切れ掛かっていたのを思い出した。
時折チカチカと点滅して、只でさえ不穏な気配をいっそう盛り上げている。
普通の蛍光灯はつまらなかったから、ブラックライトを買っておいた。
ふらふらと椅子の上に登り、切れ掛けた蛍光灯を取り外そうと上を向いた途端、
天井がゆっくりと回転を始めた。
足許がふらついて危うく落ちそうになる。
そんなに酔いが廻っているとは気付かなかった。
カーテンに掴まって何とか持ち堪える。
この無防備な体勢のまま一階まで転がり落ちれば、
首の骨くらいは簡単に折れてしまうだろう。
椅子の上から階下を見下ろすと、そこに妙な具合に捻れて
静かになっている自分の背中が見えた気がして、
それは何だか、寂しいけれど少し笑いを誘う光景な気がして、可笑しくなる。
誰が最初に見付けてくれるんだろう。
らしい、と言えばらしい最期な気もするが、まだ二三思い残す事もある。
取り敢えず買ったばかりのボトルはまだ空いていない。
酔ったら椅子の上に立つのはよそう。