蓼科からの帰還

財団の閉鎖による、作品返還先の問い合わせあり。


設置の日、鋳肌を撫でながら先生が言った。
「これはみーんな死んじゃって地上に人が誰も居なくなっても
ずっとここにこうして聳え立ってるだろうな」
さも嬉しそうに、ニヤッと笑った顔を思い出す。
秘密の悪戯を成し遂げた、悪戯小僧の様な笑顔だった。


ずっとそのまま蓼科に在り続けて欲しかった気もするが、
国の土地として返還しなければならず、
設置したままにしておく事は叶わない。


100キロ近くのブロンズの塊、何処にどう置くか・・・