建ってから初めて行く高層ビルの上で、御馳走を頂いた。
高いところにあるお店は、矢張り色んなものが高くって、
僕の普段の暮らしぶりからは縁遠いから、
知らない事が多くて何もかもが目新しく新鮮に感じられる。
次に供されるものをテーブルに運んで来て蓋を取って見せ、
一旦奥に引っ込んで取り分けてからまた運んで来るのは
「これはあなたの為だけに調理しました。スペシャルなものです」
との気持ちを表すものだと教えて頂いた。
あなたの為だけに、というのは良い。とても好きな言葉だ。
何かを作るのなら、常にそういう気持ちで臨みたいと思う。


一品一品ゆっくりと供される御馳走は勿論どれも素晴らしく
美味しいものばかりだったけれど、その合間に交わされる会話も
得るところの大きな御馳走ばかりで、お腹ではないところが
ゆっくりと満たされて行くのを感じる。
それこそが本当の“御馳走”であるのかも知れない。
無遠慮に御好意に甘えるばかりで、
歳相応のマナーも何も身についていないから、
恥をかくのではと内心びくびくしていたが、
とても楽しい時間を過ごさせて頂いた。
また一つ御恩を受けたのだ、と心に刻む。
こうした御恩を、いつか何かの形で御返し出来る様な人になりたい。
今はまだ甘えてばかり、頂いてばかり。