「みずうみ」 いしいしんじ


夢と現実が混ぜ合わされて
荒いマーブル模様を描いている様な
不思議な物語だった。
読んでいる間中
やたらと喉が乾いて水が飲みたくなったり
やたらと眠くなったりした。
退屈だから眠くなるのではない。
夢の中に引き込まれる様な感覚。
気が付くと独りで湖面に漂っている。


何処か知らない異国の街の御伽噺を想わせる一章。
タクシードライバーを中心に物語が進み、まるで雰囲気の異なる二章。
そしてムーンブーツが別名で登場する第三章。
第三章にはムーンブーツの制作依頼をして下さった女性も登場する。
そしてその旦那さんも。まだお会いした事はないが、
メールのやり取りやメッセンジャーでの会話の端々から伺えるお人柄が、
登場人物にそのまま反映されている気がして、
夢物語の様な不思議な世界観の中に妙なリアリティーを感じながら読み進めた。
面白い体験。
ムーンブーツもその女性も、まだお会いしてもいないのに
もうずっと昔から知っている友人の様に感じる。