すぐに書き留めずにおいたから、部分的にしか思い出せない。




自宅一階。
気が付けばもう随分と日が傾きかけている。
ブラインドが下ろされたままの薄暗い室内。
ふと、裏口の扉の向こうに
“絶対に入れてはいけないもの”が来ている事を知る。
それは扉のすぐ向こう側に立ち、
今にもドアノブに手を掛けようとしている。
僕はどうしていいか解らず息を殺して立ち尽くす。
鍵は掛かっている。入って来る事は出来ないだろう。
このまま遣り過そう。
そう考えた瞬間、外からは空く筈のない鍵が、
ガチャッと大きな音を立てて回るのが見えた。
続いてドアノブがゆっくりと回り、扉が少しづつ開いて行く。
扉の隙間から、細く小さな赤子の腕が覗いた。
薄黒い緑色をしたそれは、何かを探してしきりに空を掴む仕草を繰り返した。
更に扉が開いて頭の一部が見える。
呆然と様子を見ていたのがその頃になって漸く正気づき、
慌てて扉を閉めようと乱暴にドアノブを引いた。
力一杯ドアノブを押さえている筈なのに、扉は物凄い力で押し戻されて行く。