帰れば懐かしい通りがある。
懐かしい味、懐かしい声。
少しも嫌いな街じゃないのに、
何がそうさせるのか
いつも帰る前は少しだけ憂鬱になる。
そして帰ると必ず少しだけ体調を崩す。


頭から信じてる訳じゃないが
所謂 方角が良くない、というやつなのだろう。


今回もやっぱり少し調子がおかしくて、
実家に居る間中熱っぽい様な、風邪を引いてる様な
何とも言えない不調が続き、
これはもうそろそろ潮時、と東京へ引き返す新幹線の中、
左胸がキリキリ痛み出して脂汗が止まらなくなった。


大抵いつも何処かしら具合が宜しくないので、
もう多少の事は気にしない。
気にはしないが、痛いものは痛いし、面倒ではある。
品川を過ぎる頃には随分楽になったが、酷く疲れてしまって、
どうしても何処かへ腰を落ち着けて少し休みたかった。
東京駅で何処か喫茶店に入っても良かったが、
人気の少ない静かな場所へ逃げたくて、日暮里へ向かった。
頭にあったのは羽二重団子と渋い緑茶で、
本店の静かな佇まいが救ってくれそうな気がしたのだ。


ふらふらする足取で店へ辿り着いて
団子を注文する間に見る見る元気を取り戻し、
あっという間に団子を平らげ、
もう一皿追加して、急須のお茶を飲み干した。


人心地ついてすっかり元通り。
団子に救われた。