東京駅まで母を送り、
その足で日本橋まで歩いて
玉ゐで穴子の箱飯を食す。


出汁をかけて茶漬けにするなら、
穴子よりも焼き穴子の方が
香ばしくて良いと聞いたのを思い出し、
焼きで注文してみた。
その通りだった。
実に旨い。
ふかふか柔らかな煮穴子も捨て難いが
この香ばしさも堪らない。
次来たらどちらを頼もうか などと
気の早い事を考えてしまう。


もう少し時間に余裕があれば
母にも食べさせたかった。
きっと喜んだだろう。




猫嫌いだと宣言していた母は、
チィさんを見て随分と考えを変えた様だ。
チィさんも心得たもので、
普段には見られない愛想を振り撒いていた。


修羅場を潜り抜けて来た者同士、
何か通じるものがあるのだろう。
僕には良い茶飲み友達になれそうな二人に見えた。