母が泊まりに来ている。
非常に珍しい事である。


一度くらいは歳相応に人並みに
孝行などもしてみたいものだが、
そういう体裁を整える事すら侭ならない暮らしぶりだから、
せめてのんびりと寛いでもらおうと、
食事の仕度などをした。
母はそれがかえって落ち着かないのか、
手持ち無沙汰で困った様子だ。
部屋の中をうろうろして、
やたらとチィさんに話し掛けている。
僕は僕で、今更誰かに身の回りの世話をしてもらう事が落ち着かない。


何処となくぎこちなく時間が過ぎて行くのを、
チィさんは少し面白がっているのか、
側に来て興味津々で見ている。


母は少し辛過ぎたかも知れないカレーをおかわりして、
「 料理が出来るなんて知らなかった 」と言った。