レキシントンの幽霊」を買った。

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

レキシントンの幽霊 (文春文庫)


いつもの様にベッドに入ったが、
やはりなかなか寝付けない。それで
眠る前にほんの少し、
そう思ってページを開いた。
読み出したら、いつもは気にならない筈の、
明け方に近い時間特有の「音の無さ」が気になり出した。
一日のうちでも好きな時間帯だけれど
時折、静か過ぎて煩い という様な、
巧く説明する事が出来ないのだが
そんな不思議な落ち着かなさを感じる。


それでほんの少し、声に出して読んでみた。
ぼそぼそと、囁く様な声でゆっくりと。


音読し始めてすぐに、
横でくっつく様にして眠っていたチィさんが
喉を鳴らし始めた。とても機嫌が良い時にするように、
舌を出したまま目を細め、ゆっくりとこちらを見上げる。
読むのを中断すると、「それから?」と
催促する様に振り向いて見詰めるから、
僕は最初の一話をすべて音読で読み終えねばならなかった。


物語が気に入ったのかどうか、本を閉じると
チィさんはまた満足げに夢の中へと戻って行った。